語学学習において単語を効率的に覚える方法はいくつもありますが、その中でも特に記憶の定着に役立つのが「場所法(Memory Palace)」です。この方法は、古代ギリシャの時代から記憶術として活用されており、特に言語学習との相性は抜群です。
今回は、場所法の具体的な使い方と、その効果を最大化するポイントについて詳しく解説します。
こちらのYouTubeでも紹介しているので、時間のない方はご覧ください!
場所法とは?
場所法とは、覚えたい単語や情報を、頭の中で特定の場所に関連付けることで記憶しやすくする暗記法です。具体的には、日常的に歩く道や家の中、よく訪れる公園など、自分にとって馴染みのある場所をイメージし、その場所の各ポイントに単語を配置して覚えていきます。
例えば、自宅をイメージしながら、次の単語を順番通りに覚えてください。
- りんご
- ぶどう
- マンゴー
- メロン
- スイカ
ただ単にこれを覚えようとすると、上から順に何度も唱えてみるという方が多いでしょう。しかし、それでは一時的にしか記憶に定着せず、今にも忘れてしまいそうになります。
では、次のように覚えてみましょう。
- 家の玄関に入ったら、目の前にりんごが置いてあった
- 靴を脱ぐと、靴箱の中から何故かぶどうが出てきた
- 廊下を歩くと、そこらじゅうにマンゴーの絵が飾ってあった
- 階段を登ろうとすると、メロンが邪魔で上がりにくかった
- 部屋には、切ったスイカがあり、ラップをかけられていた
そして、もう一度順番に思い出してみてください。
今にも忘れてしまいそうだった記憶が、イメージと共に定着しているのではないでしょうか。これこそが場所法です。
英語学習で活用するには?
では、この場所ほうを英語学習で活用するにはどうしたらいいのでしょうか。今回は、TEDxにてTim Doner氏が紹介していた方法をご紹介します。手順を追って具体的に解説するので、実際に身近な場所を想像しながら単語を覚えてみてください。
1. イメージしやすい場所を選ぶ
まず、自分がよく知っている場所を頭の中に思い浮かべます。これは通学路や通勤路、自宅周辺の道でも構いません。生活の中でよくいく場所、幼い頃からよく知っている場所などを選ぶのがポイントです。
2. 特定のポイントに単語を結びつける
ここでは、公園を使用した例を紹介します。
- 最初に歩く遊歩道には”Walk”
- その後に休憩するベンチには”Rest”
- ベンチからみえる噴水に”Drink”
といったように、ポイントとなる地点から連想される動詞など、関連するものを当てはめていきます。ここで大切なのは、5感の全てを利用することです。
そこにあるものでだけでなく、どのような匂いがして、どのような音がするのか、細かく想像しましょう。そうすることで、単語の意味だけでなく、発音もセットで記憶に定着させることができます。
せっかくイメージしながら単語を覚えたのに、発音がわからず口に出せないという状態になってしまっては、場所法の効果は半減します。実際に使える知識をつけるために、音や匂い、感触すら想像しながら覚えていきましょう。
3. 頭の中で何度も散歩する
単語を配置したら、頭の中でその道を何度も歩くようにイメージします。
単語帳やスマホ、教科書は必要ありません。空いた時間に、あなたが作った散歩ルートを頭の中で辿ってみましょう。実際に歩くように何往復もすることで、記憶が強化され、定着していきます。
場所法の効果を最大化するポイント
1. はっきりとイメージできる場所を選ぶ
場所法を成功させるためには、脳内で鮮明にイメージできる場所を選ぶことが重要です。自分がよく知っている場所ほど、視覚的な再現がしやすくなり、記憶に結びつけやすくなります。
例えば、学校や職場への通学・通勤路、子どもの頃によく遊んだ公園、普段利用するカフェや駅など、慣れ親しんだ場所を選びましょう。また、部屋の中の家具や玄関、キッチンなど、日常的に目にするものも有効です。
逆に、あまり訪れたことのない場所や、記憶が曖昧な場所では、脳が空間を正確に再現できず、効果が半減してしまいます。確実に思い浮かべられる場所を選ぶことが、場所法を最大限に活用するカギです。
2. ユニークなイメージと結びつける
単語を覚える際に、ただ場所と結びつけるだけではなく、インパクトのあるイメージを作ることが大切です。視覚的に強烈な印象を持つものほど、記憶に残りやすくなります。
例えば、「犬(dog)」という単語を覚えたいなら、以下のようなユニークなイメージを作ると効果的です。
- 散歩道に巨大な犬が座っている
- カフェで犬がコーヒーを飲んでいる
- 教会の鐘を鳴らしている犬がいる
非現実的で面白いイメージほど、脳に強く残ります。また、色や動き、感情を加えるとさらに記憶に残りやすくなります。
例えば、
- ピンク色の犬がベンチで新聞を読んでいる
- 笑顔のバリスタが犬にエスプレッソを作っている
といったイメージを作ると、より鮮明に覚えられます。
3. ストーリーを作る
単語を単体で覚えるのではなく、ストーリーの流れを作ることで、より自然に思い出せるようになります。ストーリー性のある記憶は、脳が長期間保存しやすいという研究結果もあります。
例えば、
- カフェに入ると、大きな犬がコーヒーを飲んでいる(dog, coffee)
- その横でバリスタが笑顔で接客している(barista, smile)
- 窓の外を見ると、教会の鐘が鳴っている(cathedral, bell)
このように、ストーリーを作りながら覚えると、単語同士の関連性が生まれ、より効果的に記憶できます。流れがあることで、一つの単語を思い出すだけで、関連する単語も一緒に思い出せるメリットもあります。
場所法が言語学習に適している理由
場所法は、言語学習との相性がとてもいい勉強法です。理由は、以下の通りです。
場所法は、ただ単語を暗記するだけでなく、実際に頭の中でイメージを作り、ストーリーを想像することでアウトプットを伴う学習法です。脳が単なる記憶作業ではなく、情報を処理し、再構築するため、より深い理解が得られます。実際に話すときも、単語が視覚的なイメージと結びついているため、スムーズに思い出せるのが特徴です。
教科書や単語帳だけで学ぶと、どうしても単語が単調なリストのように感じられ、学習が退屈になることがあります。しかし、場所法を使えば、単語を現実の環境に結びつけることができ、より実用的な形で学ぶことが可能です。自分の生活圏内で単語を学ぶことで、実際の会話にも応用しやすくなります。
場所法で学んだ単語は、視覚的なイメージやストーリーと結びついているため、必要なときに素早く思い出せるようになります。これにより、実際の会話や試験の際に、よりスムーズに単語を引き出せるようになり、語彙の瞬発力が向上します。
場所法を活用して楽しく単語を覚えよう!
場所法は、単語をただ丸暗記するのではなく、実際の場所やイメージと結びつけることで、より楽しく・効率的に記憶できる方法です。イメージとして覚えられるため、いわゆる「英語脳」の成長にもつながります。
まずは、自分のよく知る散歩道や通学路を使って、簡単な単語から試してみましょう。イメージを活用し、ストーリーを作りながら繰り返すことで、確実に記憶が定着していきます。
想像力を膨らませて、楽しみながらチャレンジしてみてください!