【英語学習】大人もできる?イマージョンの誤解とやり方を完全網羅!

「イマージョン」という言葉を聞いたことがありますか? イマージョンプログラムやイマージョンラーニングなど、英語習得の効果的な方法として注目され、多くの人に知られています。

一般的にイマージョン=「たくさん英語に触れること」や「海外に住むこと」といったイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、イマージョンの本来の意味はそれだけではありません。

この記事では、イマージョンの本当の意味と、英語学習に効果的に取り入れる方法を詳しく解説します。英語力を伸ばしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

イマージョンとは?本来の意味と英語学習への応用

イマージョンとは、もともとカナダやアメリカで発展したバイリンガル教育の一環であり、「目標言語を使って一般教科を学ぶことで、言語力と学力を同時に高める」学習法を指します。具体的には、「英語で理科や数学の授業を受ける」といったスタイルが代表的です。

現在では、イマージョンは学校教育だけでなく、大人の言語学習にも応用されています。しかし、その本質は変わりません。ただ「海外に行って生活する」「英語の映画やドラマを観る」だけでは、イマージョンとは言えないのです。

実際に、Chris Lonsdale氏が行ったTED講演 “How to Learn Any Language in Six Months” では、”Immersion(ここでは、その言語が話されているような環境に身を置くこと)”が、必ずしも言語習得の決定的な要因ではないと語られています。

こちらの動画で言語学習について語っているので、ぜひ視聴してみてください。

つまり、イマージョンの本質は「英語を学ぶ」ことではなく、「英語を使う」ことにあります。これは、子供にも大人にも共通するポイントです。「英語を使って情報を得る」「英語でコンテンツを楽しむ」といった視点を持つことで、より効果的に言語を習得できるようになります。

イマージョンの種類と効果

イマージョンには、大きく分けて 2種類 あります。

  1. パッシブ・イマージョン(Passive Immersion)
    意識は割きつつも、カジュアルに言語に触れる方法。何か単純作業をしながら英語のラジオをきく、YouTubeで英語の動画を流しておくなど。
  2. アクティブ・イマージョン(Active Immersion)
    素材に集中し、意識的に学ぶ方法。英語の動画を止めて見ながら発音を真似する、意味を考えながら読解をするなど。

さまざまな文献や動画で紹介される際、異なる名称で分類されることもありますが、基本的な概念は共通しています。イマージョンの種類は、どれだけ意識を向けているかによって異なり、目的や学習スタイルに応じて使い分けることが大切です。

パッシブイマージョン

ドライブをしながら洋楽を聞く、料理をしながら海外ドラマをみるなど、いわゆる「ながら聞き」「ながら見」に当たるものです。多くの人が「イマージョン」と聞いてイメージするのは、パッシブイマージョンでしょう。ここでは、パッシブイマージョンのメリットとデメリットについて解説します。

パッシブイマージョンのデメリット

無意識になりやすい

「移動中に音楽を聴いていたのに気づけば考え事に夢中になっていた」という経験はありませんか?パッシブイマージョンは、この状態に陥りやすい勉強法です。

音は流れているのに頭に入っていない、BGMになってしまっているという状態は、もはや「パッシブイマージョン」とは言えず、「無意識のイマージョン」にあたります。

ただ言語を流しているだけの「無意識のイマージョン」は決して無意味ではありませんが、パッシブイマージョンと比べると効果はかなり薄れてしまいます。

高難易度のものを扱いにくい

パッシブイマージョンは、アクティブイマージョンに比べて難しい教材を活用しにくいというデメリットがあります。理由はシンプルで、内容を聞き取れなかったり、まったく理解できなかったりする場合、BGMを流しているのと大差ない状態になってしまうからです。

音に慣れる、言語に慣れるという意味では多少役に立ちますが、効率は落ちます。また、脳はわからない情報は流してしまいがちなので、前述の「無意識のイマージョン」に陥りやすくなります。

パッシブイマージョンのメリット

マルチタスクができる

パッシブイマージョンの大きな魅力は、日常生活の中に自然に取り入れやすいことです。たとえば、通勤中に英語のPodcastを聞いたり、料理をしながら英語のニュースを流したりすることで、特別な学習時間を設けなくても英語に触れられます。

忙しくてまとまった勉強時間が取れない人でも、生活の中で英語を自然に取り入れることで無理なく続けることができる勉強法です。

少ない労力で言語に触れられる

パッシブイマージョンは、片手間で言語に触れられるため、学習に対する心理的なハードルが低くなります。普段聞いている音楽を英語のPodcastに変える、SNSで英語の投稿をフォローする、家事をしながら英語のラジオを流すなど、小さな工夫をするだけで学習の機会を増やすことができます。

アクティブイマージョン

アクティブイマージョンは、単に聞き流すだけでなく、意味を理解しながら丁寧に言語に触れていきます。ドラマを見ながらわからない表現があったら停止し、意味を確認すると言った勉強法がこれにあたります。

アクティブイマージョンのデメリット

時間を作る必要がある

アクティブイマージョンは、他の作業をしながら行うことが難しく、集中できる環境を整える必要があります。そのため、学習のためにまとまった時間を確保しなければなりません

効果が高い反面、忙しい人にとっては負担になりやすい側面があります。特に、仕事や学校でスケジュールが埋まっている場合、継続が難しく感じることもあるでしょう。

「勉強」というイメージが強い

一般的にイマージョンというと、海外に住んだり、洋画を観たりするような「自然に言語に触れる環境」を想像する人が多いでしょう。しかし、アクティブイマージョンは、机に向かって音声を聞き取ったり、文章を精読したりと、より意識的な学習が求められます。

このため、楽しみながら言語に浸るというよりも、従来の勉強に近い感覚を持つ人も多く、心理的なハードルが高くなりがちです。

アクティブイマージョンのメリット

高い効果が得られる

アクティブイマージョンは、他の方法に比べて高い効果を得ることができる学習法です。時間と労力をかける分、言語の習得が進みやすく、長期的に見てより深い理解を得ることができます。

大きくまとまった情報を得たり、ドラマを1本理解したりなど、言語を「使う」実感が湧きやすいのも大きな特徴です。

難易度の高いものを扱える

アクティブイマージョンでは、難しいコンテンツにも挑戦できるのが大きな利点です。理解できない部分を1つずつ解き明かしながら進むため、高難易度の教材にも取り組みやすくなります。

それにより、リスニング力や語彙力など、複数の言語能力を同時に向上させることができ、学習の成長スピードもさらに上がります。もちろん、負荷は高くなりますが、その分理解できるものが増え、実力が着実に伸びるため、成長を実感しやすい方法です。

イマージョン学習のポイントと考え方

イマージョンを効果的に取り入れるためには、「言語の先にある目的」を明確にすることが重要です。イマージョンにおいて、言語の習得のみが目的になってしまうと本来の効果を発揮できません。

アメリカやカナダで行われているイマージョン教育において、母語と第2言語の発達は大きな目的の1つです。しかし、それ以外にも「一般教科の習熟」「異文化を受容する姿勢の確立」など、言語学習の先にさらに大きな目的があります。

この原理は、個人の英語学習においても変わりません。言語は、道具として使われて初めて意味をなすもの。英語というツールを使って何をしたいのかを明確にすることが何より重要です。

目的の内容は人によりますが、学問に関するものである必要はありません。

  • 英語で数学を学ぶ
  • 英語でNetflixのドラマを楽しむ
  • 英語でレシピを調べる
  • 英語でスポーツの技術を調べる

これらは全て同じイマージョンになりうるものです。言語学習だと身構えず、自分の好きなもの、興味のあるものを目的として取り組んでみましょう

イマージョンの教材を選ぶ方法

では、イマージョンをするにあたって、どのような教材を選べば良いのでしょうか。よくある疑問に答える形でご紹介します。

理解できない物でもいいの?

言語のスキルを上げたいのであれば、多少理解できない、聞き取れていないものを選ぶのは必須です。言語学習は、理解できないものを理解できるようにするプロセス。理解できない物に触れてこそ、1つ上のステップへ進めます。

しかし、難易度が高くなるほど、学習の負担も増してしまいます。かけられる時間と労力によって難易度を選ぶようにしましょう。

アクティブイマージョンとパッシブイマージョンの話にも繋がりますが、時間をかける勉強では難しいもの、移動中に聞く勉強は簡単で楽しめるもの、などと使い分けるようにするのがおすすめです。

大変だけど、これなら頑張れる!という題材を見つけるのも大事なポイントです。

どんなジャンルがいいの?

教材として選ぶべきなのは、あなたの生活に不可欠なジャンルです。サーファーに熊の危険性について伝えても、熱量を持ちづらいですが、サメの危険性については自分から積極的に学ぶでしょう。これはサメの生態という情報が自分の生活、生命に直結するからです。理解しなければ生きていけない状況に立たされることで、普段の何倍もの力を発揮できるのです。あなたの中で、サーファーにとってのサメに当たるものを見つけましょう。

生命に直結するという言い方は大げさですが、少なくとも自分がとことん興味を持って取り組めるものを選ぶことが大切です。

サッカーが上達したければ、海外選手のインタビューや解説動画はなんとしても理解したいでしょう。

次の旅行先の情報であれば、他の言語であっても必死になって情報収集するでしょう。

今、あなたの人生に必要なもの、あなたの好奇心をとことんくすぐるものを教材として選ぶようにしてください。

挫折しないコツ

イマージョンという学習法でよくある失敗が、身の回りのコンテンツを一斉に英語に変えてしまい、継続しないということです。イマージョンのために、急に全てを英語に変えようとする必要はありません。泳げない人をいきなり海に放り投げても、泳ぎ方を習得する前に溺れてしまいます。まずは水に慣れるところから、できることからはじめましょう。

英語のコンテンツに対する抵抗をなくすことが、イマージョンの第一歩です。最初は無理をせず、少しずつ英語に触れる機会を増やしていきましょう。たとえば、1日に1本英語の動画を観る、1ページだけ洋書を読んでみるといった小さな習慣から始めるのがおすすめです。

大切なのは、短期間で詰め込もうとしないこと。1日8時間の勉強を3日間だけ続けるよりも、1日30分でも1年間継続できるほうが、確実に成長できます。無理なく続けられるペースで、少しずつ英語に触れる時間を増やしていくことが、長期的な成果につながります。

そして何よりも、言語に触れることを楽しむことが重要です。興味のある内容であれば、学習が義務ではなく、自然な習慣として定着しやすくなります。無理なく続けられる方法を見つけ、自分に合ったペースでイマージョンを取り入れていきましょう。

終わりに

本記事では、イマージョンの本当の意味と、その効果的な取り入れ方について解説しました。

イマージョンは、ただ英語を聞いているだけで話せるようになる魔法の学習法ではありません。ですが、自分の好きなものを楽しみながら学べる、非常に実践的な方法です。

イマージョンの最大のコツは「楽しむこと」。興味のあるコンテンツを活用しながら、無理なく続けていくことで、英語学習はより充実したものになります。あなたの英語学習が、楽しく、実りあるものになりますように!